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アスペルガーと定型を共に生きる

  • 東山伸夫・カレン・斎藤パンダ: アスペルガーと定型を共に生きる

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2015年12月27日 (日)

サンタの世界

 もうずいぶん前ですが、こんな話を聞いたことがあります。

 小さな子どもはクリスマスにサンタさんがやってきて、プレゼントをくれると信じていたりします。もちろんそれは嘘で、実際は大人があげているわけですし、いつしか子どももその嘘を知るようになります。


 なんでそんな嘘を大人は子どもに信じ込ませようとするのでしょうか。


 生きていると、傷つくこと、つらいこと、憤ること、悲しいことにたくさん出会います。「現実」は容赦のない世界だとも言えます。もし人がそういう目の前の「現実」しか見ることができなければ、人生は苦しみの世界になり、生きる希望を持てなくなる。でも人は今ある「現実」のほかに、まだ見ぬ「未来」を考えることができます。未来はそれがどうなるのかは誰にもわかりません。それは運命のように向こうからやってくるのかもしれないし、自分で切り開けるのかもしれない。そのどちらの可能性もあって、どんな未来を思うのかはその人の生きる姿勢につながることになります。


 目の前の「現実」がつらいものでも、「未だ来ぬ」未来に何かの可能性を見いだせたとしたら、今のつらい「現実」に耐える力が生まれるかもしれない。「夢」を持てるからです。逆に未来に何の可能性も見いだせなくなれば、今のつらい「現実」に耐える力も失われ、「絶望」に至ります。


 未来は「現実」という意味で「本当のもの」ではなく、人の想像の中に生み出されるという意味で「嘘」の世界です。でも人がどんな「嘘」をそこに見出すかによって、今の「現実」を生きる今の自分が支えられたり支えられなかったりするわけです。


 ということは、今の「現実」に絶望するのも、そこで希望を持ち続けるのも、それを分けるのは「未来」の思い描き方という「嘘」によるのですから、その今の「現実」のあり方自体がそういう「嘘」に支えられているということになります。


 サンタさんは「嘘」の世界の話です。でもサンタさんがいて、自分にプレゼントをくれると思えるとき、そこにサンタを待ちわびる子どもの「喜びの今」が生まれます。「嘘」の世界が「今の現実」を豊かにしたり、逆に貧しくしたりする力を持っているわけです。


 だから大人は子どもにその「嘘」の世界を作ってあげる。子どもに「喜びの今」を与えられるように。たとえいつかはそれが嘘であることに子どもが気付くとしても、そういうサンタさんの世界を体験した子どもは、希望をもって生きる力を備えることになる。心の中にサンタさんのような「希望の部屋」を持つことができるようになるというわけです。


 ちょっと私なりに説明を加えていますが、趣旨はそんなような話でした。


 定型はその「嘘」の世界を作ろうとする傾向がすごく強いし、しかもその「嘘」をほかの人と共有しようとする傾向が著しく強いのだと思います。その「嘘」を共有できる関係は「希望」を共にできる人の関係で、それができない関係は「絶望」につながる関係になります。


 だから定型は自分の「嘘」を「そんなの嘘だ」とあからさまに言われることをものすごく嫌います。理屈からいえば根拠のない「嘘」ということになることが頭ではなんとなくわかったとしても、それを「嘘」と言ってしまうと、「今の現実」をよく生きられないくなるからです。今の自分が支えられなくなる。それは恐怖の世界です。


 定型アスペ間では、そういうことがしばしばおこるのだと思います。原因としては持って生まれた傾向もあるでしょうし、子どものころからの経験の積み重ねもあると思いますが、いずれにせよアスペの方は「嘘」に敏感です。そういう定型的な「嘘の世界」についていけないか、警戒心を持たざるを得ない場合が多い。だから素直にその「嘘」を指摘する。これが定型を激しく傷つけることにもなり、そして「反撃」や「排除」を生む原因にもなります。そして今度はアスペの方が激しく傷つけられることになる。
 


 人が生きるということは、なんらかの形で将来を予想し、将来に向けて準備をしていくことでもあります。それなしに人の人生は成り立たない。その点では定型もアスペも変わりはないはずです。ずれは「どんなふうに予想するか」という予想のつくり方と、それからその予想を「ほかの人とどう共有しようとするか(あるいはしようとしないか)」という姿勢に現れやすいのではないでしょうか。
 
 「アスペ的人生観」でも少し問題にし始めたことは、つまりそういうことでもあるのかなと思います。あらゆる「現実」は、ある意味では「嘘」に支えられた「虚構」でもあり、でもそういうものとして同時に「現実」でもあるのだ、という風に考えてみたうえでのことですから、それは定型的虚構のつくり方とアスペ的虚構のつくり方と言い換えることもできますね。でもしつこいようですが、それは単なる「嘘」ではないわけです。だからむつかしいとも言えるし、逆に言えばそこに「未来」が見えてくる可能性もあるのでしょう。

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コメント

なるほど、と思いました。
嘘から出たまこと、と、夢に向かって努力して現実になるというのは、同じことかもしれません。
しかし、嘘を本当にするには、ある程度の目測と、周りからの承認が必要になってきます。
そうでなければ、途中で、やっぱりこれは単なる嘘だったんだと、努力し続ける気力が無くなってしまうからです。

サンタさんを信じていた頃は、その現実を見なくて済むから、みんな実現できる嘘と思えるし、そういうパワーに満ちているといえますね。

アスペの人は、現実との調整をしていく過程で、多くの定型から「そんなの嘘だよ! 夢ばっかり見てるんじゃないよ!」
あるいは、「他の人に出来ても、あなたには無理でしょう!」と言われ続けて、自分の夢が何だったのかも考えられなくなってしまうのでしょう。

ひとりでも、「いくら障害があっても、できるんじゃないの?」と言ってくれる存在がいればいいですが、そういう存在にも出会えなかった人が、現実に多いのでしょうね。

その『余計なアドバイス』に苦しめられている人が多くいることを、定型側で気付いてくれる人が増えてくれるといいのでしょうが……。

一年間、ここでたくさんのことを考えて、勉強させていただき、実生活が大きく変わってきました。
たいへんお世話になり、ありがとうございました!

あすなろさん

ありがとうございます。

私の頭でっかちの記事でも、現実にお役にたつことがあるというのはとても嬉しいことです。とは言え、自分ではどういうところがお役にたつのかはよくわからなかったりするので、また教えていただければそれを手がかりに考えていきたいと思います。

大分暮れも圧し詰まってきました。正月は海外にいる子どもも戻ってきて一家で新年を迎えられます。色々大変なことを抱えながらも、それは幸せなことだなと思いますね。一時の絶望感に染まった正月のことを思うと、なおありがたいことです。

これでサンタさんが大当たりの宝くじでもプレゼントしてくれたら言うことありませんが(笑)

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