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アスペルガーと定型を共に生きる

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2015年5月12日 (火)

アナ雪に学ぶ定型アスぺ問題

 えっと,勝手にアナ雪は(定型の感覚で見た)「アスぺ問題」だという思い込みでの記事です (^ ^;)ゞ。 ……「アスぺ問題」と書いて,「定型アスぺ問題」と書かないのは,あすなろさんもそのことに触れられていますが,それがあくまでも定型の視点からだけ描かれているように思えたので,「定型アスぺ」にはまだなっていないと感じるからです。

 ということで,私の勝手な思い込みでのタイトルですが,ただ,いずれにせよ優れた物語というのは,広く深く人の「真実」に迫っていきますから,仮にアナ雪の作者が特にアスぺ問題について深い関心を持ってあれを作ったのではないとしても,あそこに描かれている人の心の理解を,「定型アスぺ問題にも」応用できるだけの深い力を備えているんだと考えてみてもいいと思います。

 またそのことは逆に言えば,仮に作者がたとえばドナウィリアムズさんの本を読んでいたり,身近に問題を抱えていたりして,そういう世界のシビアさに強い問題意識を持ってあれを作ったとすれば(その世界にもアスぺの方は多いでしょうし),そこで考えられたことが,実は定型アスぺ問題という「小さな」枠を超えて,多くの人々に伝わるような普遍的なものにつながったのだ,とも言えることになります。だからこれだけ人々に受け入れられたのだという。

 まあ,どちらから考えるにしても,多くの人々の何かに訴える,優れた映画なのでしょう。ということは,言い換えれば定型アスぺ問題は,実は定型とアスぺの間の問題だけではなくて,実に多くの人が抱えている問題にどこかつながっていく,普遍的な問題でもある,ということになりますよね。そこはすごく大事な気がします。

 

 以下,アナ雪に見えて来る定型アスぺ問題の展開を思いつくままに。

(1)子どもの頃に不思議な力を発揮し始める

 エルサは幼いうちから手に触れたものを凍らせたり,足で踏みつけると周囲に氷の世界が広がったり,雪を降らせたりといった不思議な力を持ちます。

(2)その力は人を傷つけるかもしれない

 その力は普通のひとにはないもので,親にとっては驚きですが,それは世界を凍らせたり,人に対して鋭利な刃物のように危険な力でもあります。

(3)本人も親も,その力をコントロールできない
 親は自分がそういう力を持っていませんから,その力をどうコントロールし,対処していいかわかりません。子どもも自分の力の意味が分からないので,親がそれに戸惑う姿を見せつけられて,自分の力を否定的にしか見られなくなります。

(4)唯一可能な対処はその力を押さえつけ,隠すことになる

 わけのわからない危険な力に対して,親が子どもに教えられるのは,その力を隠して人に見られないようにすること,そして可能な限り押さえつけること,さらには人との接触を可能な限りへらすことです。子どもも自分を閉じ込めることになります。

(5)その力の楽しさを,他の子どもが知ることがある

 大人にとって極めて危険なその力の「魅力」を,世間常識を知らない子どもは素朴に見つけて楽しむことが出来たりします。アナはエルサの作る雪と氷の世界でたっぷり遊ぶのです。

(6)本人はその不思議な力を肯定できない

 エルサは親からその力を否定的に見られ,そのように教えられていますから,決してその力を肯定することができません。かろうじてアナはその力を楽しんでくれますが,ところがその大事なアナをその力で傷つけてしまうという,大変にショックな事故も起こり,エルサはますます自分の力を許せなくなります。

(7)力を抑圧しても,ますますその力は強力になる

 ひたすら自分の力を押さえつけようとしても,それがなくなることはなく,コントロールできるようにもなりません。むしろその力は時と共に強くなるばかりで,周囲とはますます折り合いがつかなくなり,悪循環にしかなりません。

(8)相手への心配は伝わらない

 アナが無謀な結婚の意思をエルサに伝えると,(おそらく)その危険性を直観的に察知したエルサは理由も言わずに即座に反対するのですが,そのエルサのアナを思う気持ち(たぶん)はアナには伝わらず,アナは単に自分の気持ちが踏みにじられたと思ってトラブルになります。

(9)不思議な力は身を守るために刃になる

 怒って迫るアナを遠ざけようと,エルサは思わず力を使い,アナとの間に氷のバリアを築きますがそのバリアは氷の剣のように,アナを突き刺しそうになります。アナに対しては本来は氷と雪を楽しむ力だったものが,ここで身を守るための武器になってしまうわけです。しかもアナに対するその剣が初めて作られた場は,戴冠式後のパーティーという,第三者がたくさんいる場でした。

(11)自分の世界をとりもどすための代償は孤独の世界

 エルサは森に一人引きこもることで,初めてそれまで否定し続けてきた自分の力を使うことができ,素直な自分を取り戻します。それは「孤独」という代償によってはじめて得られた世界ですが,その喜びは孤独の寂しさを上回ります。

(12)不思議な力の危険性におののく人々は,その持ち主を殺そうとする

 人びとには受け入れられない自分の力を引きこもって発揮したエルサですが,その力はもはや自分の世界だけにはとどまらず,周囲の人々の世界も凍らせてしまいます。そのことに耐えられなくなった周囲の人々のうち,金銭欲や権力欲にかられた人々は,エルサの世界に踏み込んでエルサを殺そうと企みます。

(14)追い詰められて,身を守る力が相手を殺そうとする力に変化する

 自分を殺そうとする人々から身を守ろうとして,エルサの氷の刃は伸びていって相手を突き刺そうとし,また氷の盾は敵をおしやって突き落とそうとします。そのような力の転換点になったのは,身を守る盾に相手の矢が突き刺さり,自分が殺されようとしていることをリアルに実感したその瞬間です。

(15)愛による愛の拒絶が相手に致命傷を負わせる

 アナはあくまでもエルサを信じ,エルサが世界を凍らせていることを気づかせようとし,そしてアナたちの世界に戻ってくれることを願います。エルサは全く意図せずにアナを傷つけた過去を忘れられず,アナの為にも一人でいることを続けようとして,なおも食い下がるアナを避けようと思わず力を使ってしまうのですが,その力はアナの心を直撃し,死に至る傷を与えてしまいます。



 こんな風に見てみると,ここまでのところで定型アスぺ関係の展開の一つの典型的なパターンが描かれているような気になります。

 定型はアスぺの方の感覚(力)に戸惑い,それを否定し,押さえつけざるを得ず,アスぺの子どもはその現実の中で自分の感覚に戸惑い,自分を閉じ込めることで自分を守り,また周囲の人が傷つくことを避けようとする。お互いに自分の理解できる範囲で「相手の為に」考えてやることで,抑圧と孤独が生まれる。

 親子や姉妹の愛の中でその状態が作られるうちはまだ破滅的な事態にはなりませんが,第三者がからむような状況ではついに破壊的な作用をし始めます。力は身を守るための盾になり,その盾は相手に向けられた氷の刃です。

 さらに愛のない,利己的な欲望にかられた人々がそこに絡んでくると,事態は血も涙もない相手の抹殺,殺し合いにも発展していきます。

 そんな状態でなお自分の愛をもって迫ろうとしても,相手にはその愛はもはや通用しなくなってしまっています。お互いの愛がお互いを脅かし,あるいは傷つけ,時に致命傷を与えるような状態になってしまう。

 映画ではここで「捨て身の愛」がこの状況を救う設定になっていますが,それはやはりまだ問題の核心に届いていない感じがすることは昨日も書いた通りです。「捨て身の愛」が相手には愛として通じず,むしろ孤独な死にも結びつきうるというのが,この定型アスぺ問題のシビアなところだと思えるからです。

 ただ,アナ雪の物語には,このシビアな事態を生み出しているのは「愛のすれ違い(ズレ)」であり,それがさまざまな剣を生み出しているのだという視点,そして「愛」という形で一般化すれば,お互いに思いを共有できる可能性が出てくるという主張が含まれているのだと考えれば,それについては,私はなんとなく納得してしまいます。

 まあ,そういうのは私の「性善説」的な感覚のなせる業で,そんなのはファンタジーにすぎず,「性悪説」で考えなければ事態は打開できない,と思う方もあるでしょう。性悪説の議論には多分どうしようもない自己矛盾が実は含まれてしまう,という点を除けば,ある範囲ではそういう見方もできなくはないと思うので,そこはむつかしいところですけれど。 




    

 
 
 



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