アスペルガーの妻の夫という立場
<笑みす鯛>さんの「アスペルガーを追いかけて」というブログに出会いました。まだ書き始められたばかりのようで最初の投稿タイトルは「アスペルガー大王様、毎日が地獄です!?」という悲痛な叫びのようなもの。
このブログを読ませていただいた理由の一つは、「(元?)妻」の方のほうがアスペルガーだと著者が書かれているといういうことです。私もぼちぼちですが、他のアスペルガー当事者の方や、あるいはパートナーがASの方のブログを探して読ませていただきますが、そのうち定型の人が書くブログの場合、だいたいは「アスペルガーの人の夫」との関係で悩んでいる方が書いているように思えるんですね。ざっと見の印象なので、正確にはわかりませんが。
なぜそうなるのか?一つは自閉系の「障がい」は圧倒的に男性に多い、ということがあるのだと思います。だから「アスペルガーの夫」が書くブログはなかなか見つからない。さらにその少数派である(妻がアスペルガーの)男性の場合、自分ひとりで抱え込む傾向が強く、ブログなどには書こうとしない、という傾向もあるのかもしれません。
なぜ男性にそういう「障がい」が多く、女性には少ないのか、男性に特有の性染色体であるYの方に関連する遺伝子が多いとか、そういうこともあるのかもしれないし、あるいは「感情の細やかな理解」「共感性の強さ」みたいな能力は、社会的には子育てにも強く関係する力として女性により求められやすいということは事実として存在すると思いますし、逆に男性にはそういう力よりも「感情をまじえない計算の力」みたいなものが求められる場合が多いために(特に技術系の仕事とか)、そういう「障がい」が社会的にあまり目立たないで来たため、そういう条件を背景に長年の進化の中で女性に対して特に強く淘汰が進んだのかも知れません。
まあそういう「原因」については直面する困難について、それを知ったとしてすぐに役に立つと言うわけでもありませんけれど。
いずれにせよ、アスペルガーの当事者の方のブログはそれなりにあるし、「アスペルガーの夫を持つ女性」の場合は比較的自分たちの悩みを交流する場が作られているのに対して、「アスペルガーの妻を持つ男性」はそういう場がなかなか見あたらない、ということはそういう立場に置かれた人間にとってはずいぶんと辛いことになりますよね。アスペルガーの当事者の方も、この世の中では「少数派」の立場におかれて大変な思いをしている人が多いと思うけれど、「アスペルガーの妻を持つ男性」もまた別の意味で「少数派」の悲哀を感じやすい立場に置かれているのかも知れません。
« アスペルガーという自己理解と他者理解の不思議な例 | トップページ | 悪意のないということの難しさ »
コメント
この記事へのコメントは終了しました。
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: アスペルガーの妻の夫という立場:
» ダブルマイノリティーの悲哀。テスト編。 [佐々木加奈ドットコム - d3blog]
パンダさんのブログのトラバなので、テスト段階なので軽く書きます。
タイトルの『ダブルマイノリティーの悲哀』はだにぃさんのことであります。
だにぃさんは自閉さんと言うマイノリティーがあって、もう1つのマイノリティーは結婚した嫁が自閉さんと言うマイノリ...... [続きを読む]
初めまして。
私は自閉さん(アスペルガー症候群)、ダンナも自閉さん(広汎性発達障害)と夫婦揃って診断済です。
ダンナの場合、自閉さんと言うマイノリティーだけでなく、結婚した妻が自閉さんと言うダブルマイノリティーがあって、たまに『ダブルマイノリティーの悲哀』と言うことを味わうことがあります。
ダンナに妻が自閉さんのあるダンナネットワークを立ち上げたら?と提案したことがあります。妻抜きでガス抜きしたいことがあるような時がありますから。煮え詰まった時ほど必要だなと私は思っています。
と言うことでよろしくお願いします。
投稿: Rosamonde | 2011年1月14日 (金) 06時10分
Rosamondeさま
ようこそいらっしゃいませ。
狸穴猫さんもご夫婦そろって、加えてお子さんもアスペルガーとかみたいですね。
なんか、たとえば視覚障がいの人とか、聴覚障害の人だったら、夫婦そろって同じ障がいだと「同志」みたいな感じにもなるように思うんですけど、アスペ同志とか、その場合はそう簡単には話が進まないのでしょうか。そのあたりもなんかいずれちょっと考えてみたいなあと思っているところです。
ガス抜き、大事ですよね。
あ、そういえばアスペルガーの人は気遣いが出来ない、という言い方があるけど、そんなことやっぱりないわけですよね。このRosamondeさんのコメントが何よりの証拠。
投稿: パンダ | 2011年1月14日 (金) 13時02分
亀コメントですみません。
レスコメントありがとうございます。
トラバしてみますが、できない場合もあるのでURLを載せておきました。
よろしくお願いします。
投稿: Rosamonde | 2011年1月21日 (金) 08時58分
ASは男性、ADHDは女性に多いですね!
私は、今まで、非常〜に申し訳ないのですが、たまに「ASのみみ」などと簡単に書いてしまう事もありますが、それは間違いなんです。
私は、もし、定型ではないとしたら…
どちらかと言うと、ADHDタイプだと思います。
私は違う!私は定型!と思いたいところですが、何せ、豪華オールスターの皆さんを見れば、私が自閉であっても、何もおかしくないのです。
豪華すぎるため、たまには、一人くらい、普通の子が産まれてきても良いんじゃないか?とも願いますけどね(笑)
私には、ASかADHDかADとか、あまりこだわってないんです。
ただ、それぞれ特性はかなり違ってきますけど…
私自身は、根本は同じ。じゃないか?って思ってる部分もあるんです。
男女の本質、気質とか、環境とか、受け取り方で、育っていくうちに分類されてくのかなぁ?なんて考えたりしているんです。
なんせ、豪華オールスターを見てますから…
私は憎きこの障がいの原因を、退治するべく、模索しながら生きているのです。
私のカチコチ理論から行きますと…
男性定型、女性アスペルガーのカップルの場合は、かなり大変だと推測されます…
奥さんの両親、父が圧倒的に強くなかったですか?
投稿: みみ | 2011年1月23日 (日) 02時27分
ほんと、アスぺ妻と定型夫のカップル組み合わせ、ググっても全然ヒットしません。
結婚しないで実家で、あるいは
一人で生活してるとかが多いんでしょうかね。
投稿: いなぞ | 2011年3月 4日 (金) 00時32分
いなぞさん
まあ、それに加えて男の場合、こういうネットに「救いを求める」みたいな発想を持つ人が少ない、ということもありそうですね。
ところでいなぞさんもその少ない組み合わせの一人だったりされるんですか?
投稿: パンダ | 2011年3月 4日 (金) 17時41分
はじめまして。
「妻がアスペルガー」検索していたら、発見しました。
数日前から、少しずつ読ませてもらってます。
天命を知る年齢です。アスペの妻とアスペの16才の娘、学習障害?の中学性の息子がいます。
娘は高校進学はできなかったものの、サポート校に通っています。
家内は、ご多分にもれず友達無しの専業主婦?です。実家に帰ることを生き甲斐としています。最低月に2回は泊まってこないとダメみたいです。それだけなら、よかったのですが、アスぺの娘との折り合いも悪く、また息子も、冷蔵庫に腐った食品をいつまでも保存してあったり、冗談が通じない母を避けつつあります。
正直、手を焼いているというか悟った言うか、家内に関しては、打つ手がありません。娘のように通院して、薬を飲んでくれるとたすかるのですが、アスぺぽっいのは認めつつも、病院は断固拒否しています。
何で結婚したのかとおもいますが、パンダさんご指摘のように母親とは正反対のタイプを求めたった結果だったと思っています。
ご挨拶を兼ねてと、ついつい長くなってしまいました。
これから、よろしくお願いします。
投稿: 北斗 | 2011年9月12日 (月) 16時48分
北斗さん
コメントありがとうございます。
定型向きに作られている社会の中で、ご家族の中では唯一定型社会と他のご家族を
結ぶ役割をされているんですね。そのご苦労はどれほどかと考えてしまいます。
奥さんが「アスペっぽいのは認め」られているとのことですから、
そこがひとつの手がかりになればいいなあと思えます。
もし「この定型優位の社会でうまく生きていく工夫を一緒にしよう」
ということが共有されれば、状況が多少は変わるかも知れないからです。
もちろんそこに至るまでにもいろいろ大変でしょうけれど。
お子さんのこともあるし、現実的な問題としてはまずどこに一番エネルギーを使うか、
優先順位を考えることも意味があるかも知れませんね。
私の場合はパートナーのことはとりあえずあきらめ、まずは子どものサポートと
自分の立て直しに一生懸命エネルギーを使いました。
結果としてはそれはよかったようです。
今は子どもが私の優れた「カウンセラー」になってくれています (^_^)
これからもどうぞよろしくお願いします。
投稿: パンダ | 2011年9月13日 (火) 13時59分
男性の定型の方にお伺いしたいことがあります。
一般的に、男女の考え方に違いがあると言われています。
例えば、以下のURLにある男性の特徴ってアスぺ的だと思うのですが、でも、定型の男性からみて、定型とアスぺはやっぱり明らかに違う、とお感じになっていらっしゃるということですよね?
http://xbrand.yahoo.co.jp/category/lifestyle/7987/1.html
どこに違いがあると思われますか?単なる程度の違いなのでしょうか、それとも質的に違うのでしょうか?
もしかしたら、社会生活の中で、家族や親せき、職場や地域などの女性たちに甚大なストレスを与えているアスぺ女性も、男性である夫に与えるストレスは、気が利かないのは気になるけれど、そこさえ我慢すれば何とかなる程度だったりすることがあるのではないかと考えますが、男性の視点からはいかがでしょうか。
投稿: ジョンキル | 2012年1月15日 (日) 10時56分
ジョンキルさん
男性の定型の一人として書いてみます。
「どこに違いがあると思われますか?単なる程度の違いなのでしょうか、それとも質的に違うのでしょうか?」
紹介して下さった対比、面白いですね。とてもわかりやすい感じもするし。
ふと思ったんですが、数少ない私の知っているアスペの女性の方は
ボーイッシュな感じなんですね。「いかにも女性!」というのではなくて、
むしろそういうのに嫌悪感を感じていたりする。
で、程度の違いか質的な違いかについてはやっぱり質的な違いだと思います。
たとえば日本の男性は女性より背は平均して高いと思いますし、
スウェーデンの男性もそうだと思いますけれど、
日本の男性はスウェーデンの女性より低い。
男女を比較して「男の方が背が高い」、という一般的な言い方にすると
スウェーデンも日本も同じになってしまうんだけど、
そもそもそのレベルが全然質的に違う、という感じがあります。
定型の男性は定型の女性よりアスペ的で、
もしかするとアスペの男性は女性よりさらにアスペ的かも知れないけれど、
でも定型の男性はアスペの女性よりやっぱりずっと定型的です。
で、その違いの程度ですけれど、私自身の例で考えてみると、
それと知らない最初の二人だけの頃は「ちょっとズレる」感じ。
子どもができて「え?なにこれ?」という衝撃のズレが見えてきて、
やがて二人の関係にも「なんでこれが通じないの?」というズレが蓄積。
最後はもう訳が分かんなくなって、離婚しかないと考えるようになる。
それから「アスペと定型のズレ」という見方を知ってお互いを理解し直し、
それまでどれほどお互いに全く違う感じ方、理解をしていたかを知って
衝撃の連続になります。
そしてそこからようやくお互いの関係の調整に向けて再出発。
というわけで、そのズレは離婚とか自殺にまで結びつく可能性のある
深刻なものになりうると思います。
ただし、そこはお互いのもともとの性格やその組み合わせによって
そんなに深刻にならない場合も、ほとんど気にならないくらいの場合も
いろいろありそうな気はします。
投稿: パンダ | 2012年1月15日 (日) 14時17分